御岳カップ2022春の結果報告と波乱のドラマ-2022/04/25

キッズというカテゴライズは大人の固定観念に過ぎなかった

2022年度春の御岳カップ・リバーボード部門。
今回は各カテゴリー人数が少なかったためキッズと大人が一緒のカテゴリーで競い合った。
僕は残念ながら今回現場にいることができなくて、リバーボードのレースをライブ中継で観戦しながら、現場の人と状況を電話で確認しつつ応援していた。

キッズはMana選手とTetsu選手の2名。
二人とも御岳ローカルで日本リバーボーディング協会のメンバー。
放課後に川でリバーボードの練習を行っている2人は小学6年生になったばかり。

対する大人は2名。
Taira選手はBlue多摩川というスポーツクラブのインストラクターで普段からSUPや様々なスポーツに取り組んでおり、今回の選手の中では恐らく最もフィジカルに秀でていた選手。
Kota選手は日本リバーボーディング協会のメンバーでもあり、リバーボードクラブの常連様でもある。
以前、インタビュー動画をブログで取り上げさせていただいたこともあります。
リバーボードの競技選手として今最もトレーニングに励み実力をつけてきている選手の一人。

今回2本レースを行い、そのうちタイムの良い方を採用するシステム。
最初の一本目はキッズのTetsu選手が一位、Mana選手が二位、Kota選手が三位、Taira選手が四位だった。
このリザルトに最初はすごく驚いた。
最初の一本目とはいえ、キッズ2人が体力では遙かに上回る大人よりも速かったということに対して、驚きだけではなくて、どこか誇らしい気持ちにもなった。
いつも放課後に練習する二人は、練習という言葉や空気を出すと、すぐに目の中の光が霞んでいき興味を一気に失っていくので、ただただリバーボーディングして遊んでいる風に様々なチャレンジメニューを盛り込みながら今まで取り組んできた。
言葉で説明するよりも、お手本を見せて、楽しく泳ぐというスタイル。
でもそんな時間の中でもきっと僕たち大人が想像するより遙かに多くのことを学び、感じ取り、吸収しているのだと思う。

そもそも、僕たち大人はキッズのことをキッズとカテゴライズしているが、彼らにしてみれば競い合う上で自分たちをキッズや大人などとカテゴライズなどしていなくて、「競い合うからには誰であろうと勝つ」という、どこか子供扱いしている大人への反骨心のようなものさえあるのではないかとも思うし、そこには間違いなく揺るぎないプライドもしっかりと存在している。
それがこのレースでは明確に表現されていたのではないだろうか。
そう。僕たち大人の固定観念は僕たち大人のものでしかなく、「キッズ」という言葉自体もどこか勝負に水を差す概念なのかもしれない。

二本目は各自修正して最後の勝負に挑む

一本目が終わり、各自がレースで上手くいった点や修正点を見つめ直し二本目に繋ぐ。
ライン取りだけではなくて、ペース配分やゲートをどこまで攻めるかといった部分も、そこから更にタイムを縮めていくためには必要になってくる。
一つゲートを通ることができなければ圧倒的に不利になるため、丁寧に川の流れを使うことが必ず求められ、その中でもスピードを如何に落とさずにクリアしていくか。
リバーボード(ハイドロスピード)はレースとしてはひょっとするとリバースポーツの中で最もフィジカル的なのかもしれない。
川の流れに抗えば一気に体力は奪われる。
如何に流れに抗わず、流れを利用してすべての動作を表現することができるか。
そこにリバーボードのリバーボードたる所以があるのかなとも思う。
レースではそこを高いクォリティーで求められる。
みんな一本目で色々と思うところがあったようだ。
思い思いに作戦を練って2本目を迎える。

Kota選手の意地

一本目でキッズの二人が一位と二位の位置にいて、まさかのリザルトに大人達がここからどう盛り返すかという展開。
Kota選手は以前、御岳カップで優勝したこともある実力者で、今回も冬の期間には誰よりも強度の高い練習を川で積んできた。
彼からすれば「絶対に負けられない試合」であり、一本目のリザルトを見るまでは僕もKota選手が「勝たなければいけない」レースだと考えていた。
でも一つのゲートをミスして差を開けられた。
今回のレースは一つのミスがハッキリと明暗を分けるしっかりと緊張感のあるレースとなった。
そしてレース前の僕の考えは、良い意味で裏切られ、それは逆に嬉しくもあるサプライズとなった。

二本目でKota選手は最初のミスを修正して良いパフォーマンスを発揮した。
そして他の選手を抜いて見事に逆転優勝を飾った。
Taira選手も冷静に一本目の修正点を補って見事三位入賞。
Mana選手は今までずっと御岳カップで成績を残してきたが今回初めて入賞を逃した。
Mana選手はレースの時には普段の練習で見せる雰囲気とは違い、全く迷いの無い泳ぎをする。
今回も4番アップゲートでは彼女が一番良いエディターンを見せて大いに会場を沸かせていた。
本当に光るものがあり華のある選手で今後が楽しみだ。

負けた悔しさこそが最も良質な成長の糧

今回、特に光を当てたいのは、二位入賞を果たしたTetsu選手。
彼にとっては初めてのレースだった。
今までもレースにはそれとなく誘ってきたけれど、頑なに自分から出るとは言わず、無理には誘わずに様子を見守ってきた。
今回彼がレースに出ると聞かされたときは驚いたし嬉しかった。
実際に日本リバーボーディング協会の練習会でも、大人がこなす練習メニューをしっかりとこなせるほど、そのポテンシャルは高くて、いつも驚かされてきた。
でもスラロームの練習は殆ど行ってこなかった上に、初めてのレースだったので僕は心配しながらライブ中継を見守っていた。
僕が見る限りではとても良い泳ぎをしていたし、結果としてKota選手に逆転されて二位になってしまったけれど、僕としてはとても良くやったと思ったし、初めてのレースとしては上出来だと思っていた。
ところが、、、

大会が終わった後、親御さんからの連絡で知らされたことは、どうやらTetsu選手は一位になれなかったことと、一気に逆転されたことがあまりにも悔しすぎて表彰式を待たずに帰ってしまったと報告を受けた。

それを最初に聞いたとき、表彰式には出て欲しかったと思っていたけれど、それと同時に彼が二位入賞できたことは上出来だと評価していた自分には、彼が心の中に持つプライドやレースに挑む上での感情を全く分かってあげられていなかったと気づかされた。

悔しくて悔しくて悔しくてたまらなかったのだ。
小学5年生の時から頑張って練習してきた放課後。
大好きなリバーボード。
プールでもフィンを付けて泳いで、彼なりに積み重ねてきた努力と自信とプライドがあるのだ。
ずっと踏み出させずにいたけれど、ついに意を決して出場した初めてのレース。
今までに無いほどドキドキしていたはずだ。
とても不安で緊張していたはずだ。
大人だろうと誰であろうと絶対に負けたくないという気持ちで戦っていたのだ。

たまらなく悔しかったのだ。

うちに秘めたその想いを僕は全く分かっていなかった。
そして僕は表彰式に出ないで帰ってしまったという彼の行動にハッとさせられた。

どうかこの悔しさをずっと忘れないで欲しい。
勝つ喜びよりも、負けた時の悔しさ、上手くいかない時のもどかしさこそが成長するための最も良質な糧になるはずだ。
そして、本当の意味で負けることができるのは全力で勝負した人だけなのだ。
その負けから何かを得ることができるのは、コツコツ積み重ねながらも常に必死でチャレンジしてきた人だけなのだ。
全力で勝負して何が何でも勝ちを手にしたいと願う人達によって、そのレースは価値あるものになり、見る人の感情を揺さぶる。
今回はいつになく感情を揺さぶられたレースだった。

必死に挑戦するリバーボーダー達の物語はこれからも続いていく。

今回のレース動画




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